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イタリアを代表するオペラハウスの1つ、ローマ歌劇場が来日、「トスカ」と「リゴレット」を上演しました。ローマ歌劇場は、1994年に初来日をしていますが、名古屋のみの限定公演だったため、今回が東京初お目見えということになりました。
この公演、デッシーやブルゾンなどビッグネームも登場し、プッチーニとヴェルディの代表作といわれる人気の2演目、特に「トスカ」はローマが舞台で初演も1900年にこのローマ歌劇場ということで、話題の公演となりました。 しかし、数ヶ月前からチケットの売れ行きが非常に悪い、という情報が流れていました。 今年は6月にMETとボローニャ歌劇場というメジャーオペラハウスが相次いで来日したのを始め、カターニアのベッリーニ劇場、フィレンツェ5月音楽祭という実力派も矢継ぎ早に来日し、幾らなんでも来日公演が多すぎたこと。そしていくらデッシー、ブルゾンらがビッグネームと言っても毎年のように日本で歌っていること。チケット代がS席で55,000円という高額であることなどが原因と考えられます。しかも指揮者や歌手たちが次々に変更になってしまったり、堂々と安売りが行われてしまったので、売り出し早々に購入していたコアなオペラ・ファンたちもかなり怒っていました。 このような逆風が吹きまくりの中、かなり心配しながらNHKホールへ行ったのですが、公演自体はなかなかの好演で、オペラハウスの実力は十分に発揮出来たと思います。 私が見たのは9月30日(土)の公演。キャストは指揮がローマの音楽監督ジャンルイージ・ジェルメッティ、トスカにダニエラ・デッシー、カヴァラドッシにファビオ・アルミリアート、スカルピアにジョルジョ・スーリアンというメンバーでした。当初この日のトスカはイザベル・カバドゥが予定されていましたが、デッシーが全ての公演を歌いたいと言ったらしく、結果的には最高のキャストとなりました。しかし、デッシーは、2日前の28日にも歌い、更に翌日の1日にも歌うということで、常識ではちょっと考えられないスケジュールとなりました。 そしてそのデッシーですが、さすがに現代最高のプッチーニ・ソプラノと言われる実力は遺憾なく発揮してくれました。しかし、彼女の公演を何十回も見ている私としては、少々疲れ気味で、やや省エネ唱法という箇所が何箇所も見えてしまいました。聞かせどころというところはバッチリと決めていましたし、アクートの伸びも十分でしたが、彼女の好調時はあんなものではないでしょう。全体的に声を細めに当てていて、重唱などのアンサンブルの時には明らかにヴォリュームを絞っている感じでした。更に2幕では1フレーズ落としてしまうという信じられないシーンもありました。 一方、アルミリアートは、1幕、3幕の2つの名アリアもほぼ完璧で、2幕のVittoriaのAis(ラ♯)の伸ばしもとても良かったと思いますが、やはり全体的にはちょっとセーヴして歌っている感じはありました。もっとも会場がNHKホールだっということもあったかも知れません。 スカルピアのスーリアンもなかなかの公演。良く鳴る声で低音から高音まで安定して良く声が出ます。しかしやや一本調子で、pやfの出し入れがあまり巧みとは言えない歌い方は相変わらずでした。 そしてジェルメッティとローマ歌劇場管弦楽団と合唱団。実は現地ローマでは、あまり良いとは言えないような公演も何度も見ているので、心配していましたが、とても良かったと思います。洗練された音という感じではありませんが、さすが初演の劇場のプライドでしょうか、イタリア・オペラの匂いを感じさせるような好演だったと思います。
by hikari-kozuki
| 2006-10-02 18:11
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Comments(5)
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at 2006-10-02 21:05
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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hikari-kozuki at 2006-10-03 09:11
17日は終日NGですが、16日の夜と18日は空いていますよ。ぜひどこかでお会いしましょう。
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dognorah at 2006-10-05 19:32
ご無沙汰しております。日本もそんなに何種類もの引越し公演があるようになったのですね。
ところで以前から気になっていたことがあって、ぜひ専門家の方にお伺いしたいと思っていたのですが、多くのブロガーの方々がNHKホール、オーチャードホール、東京文化会館などでのオペラ公演では歌手がマイクを使用していることに言及されています。ヴェローナのようなところでさえマイクを使わないのに東京のホールではなぜマイクなしでの公演が出来ないのか不思議です。これらのホールでは音響が特に悪く、マイクを使用せざるを得ないのでしょうか?オペラの公演といえば生の声が聴けると信じてきただけに、ちょっと残念です。海外では例えばメットなどの大きいホールはやはりマイクを使用しているのでしょうか?もしご存知でしたら教えていただきたく。
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hikari-kozuki at 2006-10-06 19:48
こちらこそ、ご無沙汰いたしております。ロンドンの音楽事情は如何ですか?また、シェルシーのシェフチェンコはマスコミに叩かれていませんか?(笑)
さて、マイクの問題は長くなってしまうので、今日のブログの題材にさせて頂きます。
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斉藤です。
at 2006-10-10 20:14
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じつはなんだかんだで予定が繰り上がって今週末の10月15日午後から16日にかけての上京となりました。もし開いてたらよろしくお願いします。15日の午後から夜に書けてはフリ-です。いろいろ変わってごめんなさい。
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【筆者のプロフィール】 上月光 (KOZUKI,Hikari) 株式会社ラテーザ代表取締役社長。音楽評論家。青山女声合唱団団長、指導者。六本木男声合唱団倶楽部バリトンメンバー。ロイヤルチェンバーオーケストラ相談役、評議員。武蔵野音楽大学声楽科卒業。バリトン。趣味ゴルフ、スポーツ観戦等。熱狂的なACミランのファン(ミラニスタ) 【リンク】 六本木男声合唱団倶楽部 株式会社ラテーザ ピアニスト一世オフィシャルサイト 加圧トレーニングジムスイートアズ カテゴリ
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